切なさに似て…
信浩の首にかけられたネックレスチェーンが襟足から落ち。重みのあるペンダントトップが私の首筋にのしかかる。


私は眉をひそませ、その、切なそうな信浩の表情を見つめていられなくなり、瞼を閉ざした。

微かにフローラルの柔軟剤の匂いと、信浩の香水が香り。

頬に信浩が吐く、柔らかい風が当たる。


再び、熱いもので包まれた唇。

強引で、力強くて。それでいて優しくて。


長い、長い口づけに。

私は身を任せる。


唇が離れたのと同時に、掴まれた肩の力が消え去った。

私はそのままの姿勢で、瞳に信浩の姿を映し出していた。


少しずつ遠ざかる信浩の体を捕らえながら、肩で息をする。


立ち上がった信浩は私に背を見せ、テーブルへと腕を伸ばす。


ジャラジャラッと金属が幾つも合わさった音を鳴らし、足音一つ立てずに私の視界から消えて行く。


遠くで小さくガチャッと音がして、バタンッ。重たい扉が閉まる音を響かせた。


心の奥で、グルグルと何者かが暴れまくる以外は。

何故だか、私の頭の中は穏やかで。

ゆっくりと奪われた思考力が取り戻されていく。



「…嘘つき」

私は独り言を放ち、布団の上に丸くなった。
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