切なさに似て…
「まだわたしは中学生だから…。お姉ちゃんみたいに成人した社会人じゃないから」

レナから発っせられた嫌味は続いた。


「出て行こうにも、フラフラしてるお姉ちゃんみたいにアテはないし」

洗い物を終えたレナは、引き戸の取っ手にかけられたタオルで濡れた手を拭う。


「私、あんたのお姉ちゃんになった覚えないけど?」

荷物を抱えそう言い捨てた私は、雑然とした家を飛び出した。


…可愛くない。

自分の“妹”とはいえ、あのしれっとした態度には可愛いさなんて持ち合わせていない。

そういう私も、そんなことで怒りを見せるのは大人げないんだと思う。



フラフラしてるお姉ちゃんみたいに…。

好きでフラフラしているわけじゃない。


小学3年の時。まだ3歳のレナを連れ、何の前触れもなく私の前に現れた“あの人”。

私のことを“あの人”は見事なまでに大きく、そして深く巻き込んでくれた。


許さないなんて感情はもはやない。

金輪際、関わりたくないだけ。

顔も見たくなければ、口も聞きたくない。


“妹”なんて、冗談じゃない。


沸々と込み上げる感情を抑えることが出来ないまま、早足で待ち人の元へと向かった。
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