「あんた達!おばさんにあんまり迷惑かけちゃダメよ!」

「えっ?おばさんもオレ達のやりとり、楽しんでくれてるんじゃないの?」

「バカ大地!」

この一見、キツそうに見えるコイツは、僕のもう一人の幼馴染み
 
「風見・沙夜(かざみ・さよ)」だ。

長身で細身、ストレートの長い髪。知的な雰囲気が漂う美人で、大学内にもファンが多い。

だが、性格はサバけていて、どちらかと言うと男っぽいヤツだ。

「ちょっと!響!聞いてるの?」

「…あ…あぁ」

「ったく!響は響で、年中ボケーっとしてるんだから!」

「…お前こそ、たまにはスカート履くとか、女らしくしてみろよ」

「パンツスタイルの方が動きやすいのよ!」

「え~オレも沙夜のスカート姿見たーい」

「セクハラ大地!…あっ!私今日、レポート提出があるのよ!出す前に見直したいし、先行くわね!それじゃ、またお昼にテラスでね!」

「おーう☆」

「……」

沙夜はいつでもテキパキしている。

学部は法学部で、今よりももっと、女性が暮らしやすい社会を築いていけるよう、将来の為に法律を勉強している。

目的がない僕にとって、沙夜は眩しい存在だ。

「沙夜はいつもしっかりしてるよなぁ~」

「女らしくないけどな」

などと、負け惜しみを言ってみる。

「それが沙夜のいい所じゃん♪」

「…まぁな」

「…オレ達も遅刻しないよーに早く行こーゼ☆手ぇ繋いじゃう?」

「繋がねーよ」

「ちぇ!つまんないのぉ」

大地は何でも感じ取る。

僕が劣等感やコンプレックスの塊で、すぐに自分と人を比べてしまう事を、大地は誰よりも知っている。

些細な僕の表情や発言からそれを掴んで、つかさず紛らわしてくれる。

「…甘えてるなぁ…」

「ん?何か言ったぁ?」

「何でもないよ」

僕もしっかりしたい。日々そう思う。
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