僕は彼女の事を二度愛していた
呼び出し音がする。なぜか、僕は緊張した。喉が乾いてくる。
「・・・も、もしもし?」
彼女は、何かを伺っているようだった。
「菅沼・・・さん・・・?」
「大河内・・・くん?」
「うん。」
ぎこちない会話が続く。
「よかった。・・・連絡くれないと思ってたから・・・。この番号・・・大河内君の?」
彼女の鼓動が、受話器を通して僕に届く。それが彼女を愛おしく感じさせる。
「うん。」
「ねぇ、この番号、携帯に登録してもいいかな?いつ、大河内君から連絡が来ても・・・大河内君だって・・・すぐに知りたいから。」
断る事など出来ない。
「いいよ。」
「本当に?うれしい・・・、ありがとう・・・。もう、これだけで十分に幸せだよ。」
僕のたった一言が、彼女をこんなに幸せにするなんて、考えもしなかった。僕は、一方的に幸せを得ようとする事しかしてこなかった。誰かに、幸せを与えるなんて考えた事もない。
この時、人に幸せを与える事は、自分も幸せになる事だと知った。
そして、僕も、彼女も、もっと幸せになれたらと思った。
気がついたら、僕は彼女と付き合う事になっていた。
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