僕は彼女の事を二度愛していた
「予約していた大河内です。」
支配人と思われる男に、僕はそう告げた。
「大河内様、お待ちしておりました。二名様でよろしかったでしょうか?」
彼女は、僕の横にぴったりと寄り添っている。
「そうです。二名です。」
確認の意味で聞いているのだろう。そう思っていた。
しかし、よく見ると何か変だ。
「お待ち合わせで、よろしいでしょうか?」
僕と彼女はここにいる。いったい、誰と待ち合わせをすると言うのだ。
「待ち合わせ?」
聞き間違いだと思った。
「はい、違いますでしょうか?」
男の顔を見る限り、本気のようだ。僕は憤慨した。
「待ち合わせって、ここに彼女がいるのが見えないですか?」
「は、はぁ・・・。」
なんとも歯切れの悪い返事だ。
しかし、その後、男は一人納得し、僕達を席に案内した。
「申し訳ございません。お席にご案内いたします。」
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