僕は彼女の事を二度愛していた
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「拓海、あんた、一晩中何やってたね。」
家に帰ると、母親が聞いてきた。でも、返事をしなかった。虚脱感がすごかったのもある。ただ、それだけではない。答えたくても、記憶が消えていた。理由はわからない。昨日の記憶だけが、ぽっかりと空いている。
「う、うん・・・。」
それだけ言うと、僕は部屋で深い眠りについた。
何もない。深い闇。そこには何もなかった。
もちろん、歌が聞こえてくる事もあるはずがなかった。
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