僕は彼女の事を二度愛していた
うつむき降りるまで寝ようとした時、僕は声をかけられた。
「大河内。」
声の方を見ると、そこに同僚の加藤がいた。
「加藤・・・。お前、何してるの?」
「お前こそ、何してるんだよ。この電車じゃ遅刻だろ?」
「いや、寝坊しちゃって・・・。いつもはもっと前の急行に乗っているんだけど。それより、加藤、お前は?」
「俺はあれだよ、サッカー。明け方までサッカー見てて、寝坊したわけよ。お前と同じ。」
寝てないわりに、加藤は妙なテンションの高さだ。いくら空いているとは言え、この大きな声は恥ずかしい。
「加藤、声、声。」
「大丈夫だよ。客なんて、ほとんどいないだろ。」
そう言った加藤の事を、少し太ったおばさんが睨んでいたのを、僕は見逃さなかった。
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