勝利の女神になりたいのッ!~第1部~
「さぁ、長居は無用だよ!!」
部屋に来たときのようにゆきさんは正澄様の耳を引っ張って立ち上がった。
そして襖の前で振り返ってニッコリと笑ったゆきさん。
「今日はゆっくり休んでまた明日からしっかり働いてもらうよ!!」
私に向けて言葉をくれた。
とっても嫌な思いをしたはずなのにまた働かせてくれる。
ゆきさんの優しい言葉に我慢していた涙が溢れて零れ落ちた。
「はい!!よろしくお願いします。」
ゆきさんの背中に声を掛けて私は大声で泣いたんだ。
左近さんや朱里さん、それに三成も部屋にいたけど我慢できなかった。
もうゆきさんと顔を合わすこともできなくなるって....
仕事場に私の場所はなくなるんじゃないかって.....
寂しかった気持ち、不安な気持ちが一気に吹っ飛んだ。
嬉しかった。
とっても嬉しかったんだ。
「紫衣がいつもとても正直に自分に嘘をつくことなく頑張っていること、ゆきさんもわかってくれてたんだね」
泣きじゃくる私の頭を撫でながら言ってくれた朱里さんの言葉も私の宝物。
「どうしてもっと早くに相談しなかったんだ!!」
怒っているけれど愛情たっぷりな左近さんの言葉も私の宝物。
逃げなければ私は自分を好きでいられる。
逃げなければ私を好きでいてくれる人がそばにいてくれる。
ずっと逃げていた私が逃げずに掴んだ宝物。
一生心に残る宝物を手に入れた。