長閑【短編集】


…しかもこっちに走ってくる?

その人は僕の居る場所へと近づいてきた。


それはよく見ると女だった。


制服からすると僕と同じ高校だろう。

ただし、髪の毛も服もスカートもびしょ濡れ。

水溜まりを踏みながらも走って来た彼女は僕の隣で止まった。


さらに雨が彼女に襲いかかる。


僕はその人につい話かけた。

「あのー‥大丈夫?」

「うーん。もうびしょ濡れ。」

彼女はそう言いながら笑って答えを返す。

…いや、笑い事じゃないぞ。


僕は自分の傘を彼女にかけてあげた。
< 43 / 50 >

この作品をシェア

pagetop