長閑【短編集】


現在時刻 5時06分


「ほらね。」

そう言いながら僕は整理券を取ってバスに乗り込んだ。

彼女も後ろから付いて来る。

やはりと思ったが今日もバスは混んでいた。

僕は本来ならば二人で座るべき席に1人で座った。

「あのさ。」

いきなり、横からさっきの彼女の声。

「隣、座ってもいい?」

「え?」

なるほど、周りを見渡すと僕の隣以外空いていない。

「どうぞ。」

そう返すと彼女はふわりと隣に座って鞄からタオルを取り出した。

自分の頭を拭きながら、

「大丈夫?風邪ひかない?」

なんて聞いてくる。

「風邪?」

…そんなのもういいよ。


雨のバス停での出会いが2人の運命の出会いになるとは、


僕らも梅雨の雨も

まだ誰も知らなかった。




バス停 end.
< 45 / 50 >

この作品をシェア

pagetop