神威異伝
十夜が部屋を後にして、賢雄も部屋から出て庭先に向かった。
風も穏やかで、落ち葉も少なく小さいながら可憐に咲く花からは春の息吹を静かに感じられる…。
賢雄は、この場所がお気に入りだった。
足元に咲く花を踏まないよう、気をつけながら賢雄が歩いていると…
「…村長」
村医者が庭に入って来た。
「お主か…何か用かの?」
村医者が来た事に驚きつつも、賢雄は声をかけた。
庭に入り、賢雄の目の前に立った村医者が…声をひそめながら呟いた。
「三日前の、旅人達の事…本当は知っておられますね?」
一陣の風が吹いた。
…その風に吹かれ、いくつかの花びらが舞った。