神威異伝
「村ちょ…」
「確かに儂は…あやつに、嘉禄に会った事が一度だけある」
賢雄が村医者に背を向け、独り言のように呟いた。
村医者は口を挟まず…黙ってそれを聞き続ける。
「嘉禄は…儂だけではなく、理緒にも深い傷を残した。だが……」
賢雄が振り返った。
その微笑みには…悲しみが混じっているように見える。
「その事を儂は…あの子達に、言うつもりはないんじゃ」
「何故か…と、聞いてもよろしいでしょうか?」
村医者がそう問いかけると、賢雄が目を閉じた。
「……早いんじゃ、まだ早い」
「早い…?」
「そう、まだ伝えるには早すぎる…」