10年目の告白~愛バージョン
7年目
まだ帰らなくていいの?

私はまだ帰らなくていいの?
あなたはまだ帰らなくていいの?


まだ一緒に居ていいの?


ふいに少しだけ延びた
許された時間を
子供の様に喜んだ。


夢と現実の狭間(はざま)を繰り返しているうちに

私の平常心は
保てなくなっていた。


“帰りたくないな”



一つ目の乗り換え駅を下りてから
駅前のバーへ寄った。

バーだというのに
ウーロン杯を二つ注文する。
私たちらしい。

バーも、バーらしい客層で
タトゥを描いた腕の太い外国人。

ひとり黙って茶色いロックグラスを傾ける老人。

嫌いな雰囲気ではなかったが、

「おい電車の時間だ。早く飲んじまえ。次の店いくぞ」

命令口調はいつもの事で
私には断る理由などなく、
すぐにそこを出る事になった。

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