恋愛スキル
「ちゃんと捕まってないと落ちるぞ」
ハッとなって、私は思わずこの鼓動が聴こえてしまわないように、控えめに彼の首にしがみつく。「そうそう」と、後ろ姿の彼は満足げに笑った。
保健室までの短い距離を、言葉なく歩く彼。
でも、それは居心地の悪いものではなくて……。
むしろ、何だか穏やかで。
窓から入る心地よい風が、私達を優しく包んだ。
「はい、到着」
保健室に着くと、彼は私を保健医に預け、足早に去って行った。
ちゃんと、お礼も言えなかった。
また会えたら、ちゃんと言わなくちゃ。
でも……会えるのかな……?
私は、保健医に包帯を巻いて貰いながら、ボーっと余韻に浸っていた。