恋愛スキル


美術室のドアが開いて、つなぎ姿の浅利が入って来た。
美術部以外の奴が来るなんて、そうとう珍しいんだろうな。


「うっす。見学に来ました」


俺がペコリと頭を下げると「お前は既にバスケ部員だろ?」と、笑いながら浅利は俺に画用紙を一枚差し出した。


「せっかくだし、描いてみるか?」


俺が画用紙を受け取ると、浅利はうんうんと頷き、他の生徒の様子を見に行った。


描くって……

何を描けばいいんだよ……。


俺は緋乃の向かい側に座る。

チラッと緋乃に目をやると、黙々と手を動かしていた。

緋乃はスイッチが入ると凄まじい集中力を発揮するからな……。


俺は特に描きたい物も無いから、緋乃を描く事にした。

集中している緋乃は、俺の視線なんて気付かないだろうし。


俺は緋乃の顔を見つめながら、バカみたいに真面目に描いていく。



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