薔薇の欠片
王子様なんて存在しないのに
「僕が君を殺しても、
君は僕を愛してくれる?」
僕はそう言っていた。
そして、
彼女に拒絶して欲しかった。
そうなれば、せめてもの救い。
僕は彼女に牙を突き刺すことができると思った。
「始めからから、こうするつもりだったんだよ。
吸血鬼は本当は何も食べなくても生きていけるんだ。
ただ、暇なんだよ。
代わり映えのしない毎日。
だから、“遊び”として人を狩る」
わかっているんだろう。
このまま逃げなければ君は殺される、
僕に。
もう、
僕の体のほとんどが本能に侵されている。
完全に本能に支配されたとき、
彼女は血を吸われるだけではすまされないかもしれない。