薔薇の欠片
海原の淡水人魚
ほとんどは賭けだった。
彼が吸血鬼だと言う決定的な証拠はない。
目の色だって偶然薄い色だったり、牙のように尖った歯なのかもしれない。
だから、私が彼のことを“吸血鬼”と呼んだときに、思いっきり馬鹿にして笑ってほしかった。
だけど、
今私の目の前にいる玲さんの瞳は紛れもない銀色だ。
「貴方は、軽蔑しないんですか?」
否定は、しなかった。
それは、肯定ととらえてもいいのだろうか。
そう考えるが、私の答えはすぐに出た。
「しません」
そう言う私を見て、試すように彼は言った。
「僕が貴方を殺してしまうかもしれないのに?」
決定的な一言だった。
彼の口からそんな言葉が出るとは思わなかった。
だけど、それでもひるまない。