薔薇の欠片
魔法を囁いて
私はあれから毎日のように怯えていた。
朝、自分の部屋を出られることに安心する。
いつ家に閉じ込められるかどうかもわからない。
両親にバレるのも時間の問題だ。
今の私の心の支えは、
たった一つ。
カレンダーを見るたびに数える。
どれだけ待ったことだろう、
だけどやっとそのときが来た。
今日は、満月だ。
親の前ではいつものようにふるまう。
だけど、お別れも言わなくちゃいけない。
百合にも言わなくちゃいけない。
高藤さんには……会えない。
これだけは邪魔されたくないから。
だから、
ごめんなさい。