着せ替え人形


「溜まってるようなのに申し訳ないけど…続きはまた今度ね」


あたしの頭に手を乗せながら、彼はからかうように言った。


「別に一ノ瀬さんが相手してくれなくても、男性には不自由してないんで」


「うらやましいなぁ。
じゃあ、また仕上がり次第連絡するから」


「わかりました」


寝室を出て、玄関で靴を履きかえた。


「送っていかなくて大丈夫?」


「大丈夫ですよ。
その分お仕事の方を進めてください」


今日一番の笑顔で彼を見てやった。


「ありがと。
じゃあ、気を付けて」


頭を下げて外に出ると、冷たい風に包まれて…
何があったわけじゃないけど、少しだけ泣きたくなった。


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