着せ替え人形


カーナビの指示に従っていると、だんだん見慣れた風景が広がってきた。


「うわっ…懐かしいな」


ここに来たのは何年ぶりだろう。
下手したら大学を卒業した時以来かもしれない。


胸の奧が締め付けられるような気がした。


生まれた時から20年弱、俺が育った場所。
例の彼女との思い出もつまった場所だ。


小道に入ってそこの角を曲がると彼女の家。
そして真っ直ぐ進むと…



「あったあった。
ただいま」


俺の実家。


何で本当にここまで来れたのか不思議で仕方ない。

ある意味奈津子のおかげだな。


車のないガレージに車を入れ、奈津子より一足先に外に出て、伸びをした。


都会とは違う風の匂いがした。


さて、眠ったままの姫を起こすか。


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