雨夜の月

‥揺るぎない心‥

高校初の文化祭は想像通りの、少し大人びた文化祭だった。

去年までの、あの子供染みた出し物はない。

ずっと千里と行動し、気の向くままに校内を歩いた。


広い校内、人混みに疲れたら、座る場所は幾らでもある。



人気の少ない場所で千里と腰を降ろし、

「ずっと文化祭でいいね」

「授業いらないね」

と、笑った。


女の子たちの笑い声が、長い廊下を伝って響いてくる。

秋の匂いを運ぶ風が、私たちをすり抜けて流れていく。


「…美月」

声のトーンからして、楽しい話ではない気がした。


「何…?どうしたの…?」


膝の上に置いた顔を此方に向けて、千里は笑った。


「私もね、嵐が好きだったの」



心と頭の中で、

『えーッッ!!嘘ッ!!』

と叫んだが、声にはならなかった。


「え…?千里も…?」

「って言っても、中学の時の話よ」


千里はクスクスと笑って、潔く顔を上げた。


「私が嵐を好きだった時、嵐には彼女がいたの」

「千里…」

「でね、好きだったけど諦めたの」


そよ風になびく長い髪を、手で軽くかきあげて千里は私を見た。

「後悔しないでね」




強いね…千里。

乗り越えたからこそ、そう言えるんだね。


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