助手席に君を
私はどうやら、運転センスがないらしい。実技の運転。しょっぱなから、私は怒られている。

「違う、違う、違うから!!」

「すみません…」

「はぁ。まぁ、とりあえず、初めだし次からがんばってよ。一応、合格にしとくから。」

「…ありがとうございます。」

そんな嫌味な言い方をしなくたっていいじゃん。

「どうだった?」

家に帰るとママは、お帰りよりも前にそんなことを聞いてきた。

「最悪でした。怒られました。全然うまくできるような気がしないんだけどー!!だいたいさぁ、初めからうまく運転できる人なんて少ないと思うんだよな。機械のシュミレーションでしかやったことがないのに、できるわけないでしょ!!!!」

今日の最悪だった教習所体験を一気に話した。

「まぁまぁ、がんばんなよ。それに、オートマなんだから、大丈夫よ。運転は慣れだから。」

そういってママは慰めてくれたけど、私にはうまくなる気配すら感じないし…。

私は、今日をある意味待ち望んでいた。

ほら、よくあるじゃない?漫画とか、恋愛小説とか、ドラマとかさぁ、教習所の教官と恋に落ちるっていうシチュエーション。

中高6年間女子校の私は憧れていたんですよ。

しかも、初めての今日は教官は若くてかっこいいし(ちょっとナルシストっぽかったけど)、あるんじゃないかなって妄想していたんです。

でも……妄想は妄想でした。かっこよくてもムカつく奴だし、全く好きになる要素はなかった。あー、明日も教習所だよ。行きたくない…


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