流れ星との約束
 3番打者の林が右バッターボックスに入る。身長は185cmくらいあるだろうか。その威圧感は、それまでの2人と比べても凄まじかった。
 
 吉田のサインは内角低めのカーブ。しかし、克也はグローブの中でストレートの握りを作った。
 
――お前のサインを無視しても……
 
 そのまま克也は振りかぶる。外角高めへ渾身のストレートを投げ込むつもりだ。
 
 もしかしたら吉田は捕れないかもしれない。球種までサインと違えば、それは間違いないだろう。
 
――俺は2アウト取れてんだよ!
 
 克也の右手からボールが離れる。綺麗にバックスピンがかかったそれは、吉田が構える所とは全然違うところへと向かう。
 
 投げ終わった体勢から、林のバットが動き出したのが克也には見えた。
 
 刹那、甲高い金属音がグラウンドに鳴り響いた。
 
 
「レフト!」
 
 
 おそらく、レフトを守る田中以外の全選手がそう叫んだ。しかし無情にも打球は、後退していた田中の頭を、低めのライナーで越えていく。
 
 レフトが狭く作られている綾北のグラウンドに助けられ、打球はすぐに壁に跳ね返る。しかし、田中からの返球がショートの市橋に返ったときには、2塁ベース上に林の姿があった。
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