『サヨナラの向こうにあるもの』
真夏のライブハウスは、人々の熱気で息苦しいほどに盛り上がっていた。



誘われるままバンドスタッフだと言うその人に連れて行かれたテーブルの隅に優二は立っていた。



裕子と静江と私の他に、演奏を終えた十人程のメンバーとそれをねぎらうスタッフ達で溢れかえっていた。



若いというだけで全てを味方に出来そうな勢いや、華やかさだけを受け入れるような空間がそこには満ちあふれていた。


「私達場違いなんじゃない?」



裕子も静江も落ち着かないようすで、それらしき業界の話題や、専門的な知識をひけらかす派手な男達にうちとけられずにいた。



「CDあげるよ。
聞いてみて。

それと、はいビール」


男達が慌ただしく通り過ぎる。



「良い曲が入ってるよ。

どんなジャンルがすきなの?」



つまらなそうな私達を、見透かしたように彼は話しかけてきた。





それが優二との始まりだった。

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