あれから。
兄はほとほと困った顔をして、弟を覗き込んだ。
今にも泣きそうな子供が強がっているようにも見えるその顔は、実の兄には相当きいたのだろう。

兄が口を開いた。




「…良いでしょう。外に出して差し上げます。」

「本当!?」

「えぇ、本当ですとも。ただし条件があります。」

「何?」

「どこに行きたいのか、誰に会いたいのか…教えなさい。」




シェイドが黙り込んでしまった。
しかられた子供のように俯き、顔を上げないでいる。

兄は溜息をついて、シェイドの頭を撫でた。




「言いたくないのならばそれも良いでしょう。ですが、言わないのならば外に出す訳には参りません。」

「お友達…」

「んなぁっ!!?あれほど友達は作ってはいけませんと言ったのに…!」

「なんで!?なんで僕だけだめなの!徹さん達はみんな友達いるじゃん!なんで僕だけ…!」

「シェイド。あなたはそのお友達より長く生きるのです。お友達が亡くなった時には、深い悲しみに襲われるでしょう。」

「…。」

「そうするとあなたは暴走して私達に多大な迷惑をかけます!冗談じゃありませんよ!」




兄の言葉に、シェイドが怒鳴ろうとした瞬間、口を塞がれた。
人差し指を口元にあて、シェイドをまっすぐと見ていた。




「良いでしょう。私が連れて行って差し上げます。ただしちゃんと言う事聞くんですよ?マスターには内緒です。」

「うん…!!」




満面の笑みとはまさにこれを指すだろう。

実に嬉しそうな笑顔であった。
それに兄は苦笑しているように見えた。
仮面で隠された表情も、こんな時には色となって出てくる。
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