-三日月の雫-
純愛
シーツの影に見える雫希の左手に指を絡め、ギュッと握り締める。


俺がどんなに手を握ったって、雫希の涙はもう止まらないだろう……。



「……ごめん雫希」



ホントは、好きで堪らない。
愛してるって死ぬほど囁きたい。



「……サヨナラ」



俺が消えれば、宮越の家も小野寺から手を引くしかないだろう。



そしたらきっと、雫希はいつか心から愛する相手と……ホントに結ばれることが出来る。



「……傷、いっぱい付けてごめんな」



そっと涙の残る雫希の瞳に唇を寄せた。


これが最後だから、どうか触れることを許して欲しい。



気が付けば、雫希を背中から抱きすくめていた。


次々零れ落ちる涙が、頬を伝って雫希の髪を濡らしていた。



泣くべきなのは俺じゃない。
わかってるのに、涙は止まってくれそうになかった。



雫希が起きてしまわない内に、出て行ってしまおう。



雫希から両腕を外し、身を退けようとした時だった。

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