-三日月の雫-
後継者
「小野寺家から正式に、跡継ぎの打診があった」



「…………」



父の口からこれを聞いたのは、十八の誕生日を一週間後に控えた夜のことだった。


来るときが来た。



そう思い、ゆっくりと息をついた後、



「……わかりました。明日、挨拶に行ってきます」



ハッキリとした声で答えた俺に、父は満足そうに深く頷いた。



その父の表情に、俺も認められたんだって……そう感じていた。


でもそれは……虚像。
弱くて寂しい俺の心が見せた、哀れな虚像でしかなかった……。





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