ラヴシンドローム~意地悪なkiss~
 
数分くらい歩くと、人のいない小さな公園に着いた。


屋根のあるベンチに座ると、銀ちゃんがふうっと息を吐いた。


「……大丈夫か?」


「……あはは。

私、本当にバカだよね……。

別れて1年以上経つんだから、橋本くんに彼女いてもおかしくないのに……」


「……」


春にしては珍しい冷たい風が、沈黙を連れてくる。


「忘れられなかったの、私の方だけだったみたい」


「花梨……」


「片想い……だったんだね」


ポツリと呟いた自分の言葉で、改めて失恋したことを実感する。


すると、銀ちゃんの手が私の頭を優しく撫でた。


その途端、こらえていた涙がポロッと溢れた。


「う……うっ……」


「……誰も見てねえよ」


「銀ちゃ……グスッ……ぅ、うわああああん!」


銀ちゃんに抱き付いて、子どもみたいに泣いた。


銀ちゃんは黙って胸を貸してくれた。


「……お前の気が済むまで、付き合ってやるよ」


そう言って、銀ちゃんは控えめに私を抱き締めた。


「銀ちゃ……ありがと……」


それから1時間、私は銀ちゃんの腕の中で涙を流した。


 
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