Bloody Kiss
「お嬢ちゃん、ヴァンパイアが本当にいると思ってるのか!?」

店主はそう言ってガハガハとあの耳障りな笑いを繰り出す。

あぁ、余計なこと言ったかも。

普通に暮らしている人は吸血鬼の存在を知らない。ただの御伽噺だと思ってる。恢に出会う前の私もそうだった。
だから吸血鬼の存在については口にしないようにしていたのに。うっかり口を滑らせてしまった。

その結果がこれだ。

店主はまだ笑っている。耳障りすぎて頭が痛くなってきた。

「アリア、出るぞ」

「えっ!?」

頭を抱えてため息をついた直後、今まで傍観していた恢がいきなり私の手を引いて歩き出した。いつの間に手にしたのか、もう一方の手にはアタッシュケースが抱えられている。

「お代はカウンターの上に置いておいた。つりはいらない」

恢が振り返らずに言い放つ。

「お嬢ちゃん、ヴァンパイアを倒したら教えてくれよ」

店主はガハガハと笑いながら送り出す。
恢に利き手を捕まれていなければ黙らせてやることも出来るのに!

仕方なく黙って恢に手を引かれ、店を後にした。店主の耳障りな笑い声をBGMに。
外に出てもまだ店主の笑い声が聞こえる。たった数分であの店主のことが心底嫌いになった。
もうこの店には絶対行かない。

「恢、ありがとう」

少し歩いて笑い声が聞こえなくなったところで、前を歩く恢にぽつりと呟いた。
すると恢は足を止め、振り向いた。その顔はまるで「何が?」とでも言いたげな表情をしている。

「恢が連れ出してくれたから人を殺さずに済んだわ。あのまま店にいたら絶対一発お見舞いしてたもの」

「……あの笑い声を聞いていたくなかっただけだ」

恢は素っ気なくそれだけ言うとまた歩き出した。



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