アッパー・ランナーズ〜Eternal Beginning〜
「ランナーズ……うちのジジイが?」

「……」

「マエストロだけじゃないわ」

黙り込むジジイを尻目に、彼女は上機嫌で話し続ける。

「あなたの父親であるアレン=スウェルも、母親のリコ=リアも。そして……息子であるあなたにも、生粋のランナーズの血が流れているわ」

「!!」

「ランナーズのデータベースから、カルガンチュア政府のサーバーにハッキングして、色々と調べさせて貰ったわ。……五年前にランナーズとして活動中に両親が揃って謎の失踪。同時期にカナという子を養子として受け入れ、ランド=スウェルが宝石加工職人として開業。長男ルーク=スウェルは、パスタル高専大学校に在学し、つい昨日、めでたく卒業……当たっているかしら?」

彼女の並べたそれは、全て正確にうちの年表を言い当てていた。

「だ、だったら何だよ!」

「私のチームに入りなさい」

「……は?」

言葉の意味を理解しきれず固まるぼくに、彼女は小さく溜め息を吐き、もう一度同じ言葉を繰り返した。

「私のチームに入りなさい。……いや、正確には私達のチームかしら。卒業して宝石加工職人を継ぐつもりだったようだけど、それはもっと先の話になるわ。だってこれは既に決定事項だもの。私も不本意ではあるけれど、あいつの占いはよく当たるから」

言いながら、ジジイを抑えていた両手を放し、うっとうしそうに前髪を払う。

それでもジジイが唸りながらも起き上がれないのを見ると、どうやら膝と足首で関節をキめているらしかった。なんて器用な……。

「最終的に決定を下したのはノーフェイスなんだけどね。私も巫女は分からないけど『幻想の翼』ってのはさっき直に見てるのが間違いなくそうだろうし、大概そんな職人芸の極みみたいなレアアイテムになると、決められた人間にしか扱えないらしいからね……という訳で孫ちゃんはフライング・ダッチマン(うちのランナーズ)が頂いていくわ」

これは頼みじゃない、命令よと、腕組みをしながらおでこ女がジジイを見下ろす。

「ぼくは嫌だぜ!そんな理不尽な命令!聞かないなら今度こそぼくを殺すのか?」

「勘違いしないで。家柄をバラされたのは予想外だったみたいだけど、ランナーズ入りを望んでいるのはむしろ私達よりマエストロなんだから」
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