三国志疾風録
 苦情を言う簡擁に周倉は信じられぬ凄いと呟きながら、簡擁の両肩を掴んだ。

 「アトミックボンバー!」

 簡擁の右アッパーが直撃したが、周倉は痛がる仕草も無しに凄いを連発している。
 見かねた張飛が周倉を簡擁から引き離した。

 「おっさん、簡擁には変な機能付いてないから期待すんな。こいつは単なるワープロ代わりだ」

 「何言ってるですか張飛さん。ハイエンド仕様の私には特別機能が満載ですよー。ね、関羽さ~ん」

 簡擁は関羽に微笑みかけた。途端に関羽の鉄拳が飛んだ。

 「ポンコツが誤解を招く言い回しをするな! 違うぞ張飛。私は漢だ。漢の道は私の道。漢の道に不義不敬は存在せぬ!」

 「必死になんなよ兄弟。簡擁の抜けた発言はいつもの事だろ。それともアレか? 漢だから漢らしい行いだったとかの意味か?」

 関羽と張飛が言い合っている間も、周倉は簡擁に熱い視線を痛いほど穴が空くほどこぼれるほどに注ぎ続けた。

 「簡擁さん――か、頭上の赤い輪は何かの兵器か?」

 周倉は機械相手にどう喋ったらよいのか戸惑いながら聞いた。

 「違います違いますよー。兵器じゃないから触っても平気! なんちゃって! これは通信状態を表していてですねー、赤は不通状態ですです」

 「赤以外見た事ねーけどな。賊が近くにいるはずだから、距離と人数見てくれ」

 張飛が言うと簡擁の瞳が青から赤に変化し、周囲を見渡した。

 「近距離に36人。中距離に1人。目の前に3人。さて逃げましょう!」

 「逃がすかよ」

 草むらに隠れていたのか簡擁の言葉が合図かの如く、黄色いハンカチを腕や頭に巻いている男達が次々に現れて関羽達を取り囲んだ。

 だから早く隠れろと歯噛みをした周倉に、リーダーらしい男が唾を吐いた。

 「てめえ、馬休と一緒に派手に脱走しやがった奴だな。仲間と落ち合う算段だったとは、楽に死ねると思うなよ」

 「けっ、大義名分は立派だが、やってる事は賊と変わらない奴等と一緒にいれるかよ。言っておくがこちらにはあの青山を変形させるほどの最終兵器があるんだぜ」

 周倉は簡擁に目で合図を送ったが、簡擁はどこどこと周りを見回しただけだった。
 そこに張飛がずいと前に出た。
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