紺色の海、緋色の空
しばらくすると、ようやく少し大きな街にたどり着いた。

駅の柱のプレートには、金文字で「ニューカッスル駅」と刻まれていた。

腕時計を見ると、いつの間にかヨークを出てから一時間以上が経っていた。

これまでに街らしい街を見たのは二度ほどだけだった。

街はまるで草原という名の砂漠に沸いたオアシスのように、現れては消え、消えてはまた現れた。

そんな街にも数千、数万という人々の営みがある。

街はそれぞれに違った時の流れを持ち、家族や友人、隣人達と共に暮らす人々を静かに支えている。

何も語らず。

ただ静かに見守っている。

その街の人たちが何を思い、考え、生きているのか、僕は知ることがない。

知らないからこそ、旅ができる。

生きていける。

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