紺色の海、緋色の空

風見鶏の夢

5


アデルフィホテルの老婦人が言っていたとおり、スコットランドの風はロンドンとは比べものにならないほど寒かった。

エディンバラ駅の構内を歩く人々はコートを羽織り、一様に肩をすくませていた。

「夏、よね?」

婦人の言いつけどおりヨークで厚めのストールを買い付けていたシロナが、僕に腕を絡ませて首を傾げた。

「そう。まだ七月」

「ロンドンはね」

「ここだって同じさ」

「本当に?」

「たぶんね」

僕は苦笑いで返すしかなかった。

吐く息が白い。

「まるで、違う国に来たみたいね」

蒸気機関車よろしくホッホッと息を吐き出しながら言ったシロナの言葉に、僕は心の中で同意した。

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