紺色の海、緋色の空
紅茶を飲んでから服を着替えた。それから髭を剃って髪を直して階下に降りると、あの話し好きなフロントの老婦人が朝食を案内してくれた。

ポークビーンズとサラダ、パン、コーンフロスト。そして紅茶。

正直、イギリスでの食事にはそれほど期待してはいなかった。

案の定、と言ったところだろうか。可もなく不可もなく、この調子だと数日後には日本食が恋しくなるんだろうなと思った。


「この文字の意味が分かりますか?」

食事を終えた後、僕はフロントの老婦人に鍵を預け、最初に「彼女」から届いた一枚の絵はがきを見せた。

「……IANE?」

老婦人は二度ほど読み返し、結局「さあ」と言って首を傾げた。

僕はそうですよねと言って絵はがきをズボンに突っ込んだ。

そうそう簡単にヒントが見つかると思っていたわけじゃない。ただ、シロナがこのホテルに泊まりたがったことが少し気に掛かっていただけだ。

< 75 / 239 >

この作品をシェア

pagetop