白き旋律
「紀紗!!」

俺は紀紗の方へと首を向けた。


「あ、止めないで。
そのままちゃんと終わりまで弾き続けてよ。」

「…うん。分かった。」


俺は指を止めずに弾き続けた。
あの頃とは違うって…紀紗に思ってもらえるように。
想いを込めて…。








パチパチパチパチ…

弾き終わると紀紗が笑顔で拍手を送ってくれる。



「前とは大違い。
ショパンを弾かせたら私、悠夜には負けちゃうなぁ…。」

「んなことないよ。
俺は紀紗が弾くショパンも好きだけど?」

「私は悠夜の弾くショパンの方が好きだもん。」


『好き』という言葉に過剰反応する俺。
ちょっとどきっとする。
紀紗はそういう意味で言ったんじゃないのに…。

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