ときどき阿修羅!!
「あ、そう言えば、タマキが部屋においでって言ってたよ」

「部屋?」

「廊下の突き当たり。
俺は、もう帰るね」

 灰皿を持ったまま立ち上がったリセさんにならって、私も立ち上がる。

「帰っちゃうんですか?」

「ん? そりゃあ帰るよ」

 考えてみれば、ここはタマキさんの家で、リセさんの家じゃないから当たり前なんだけど、てっきりリセさんも泊まっていくもんだと思ってた。

 ……なんだか寂しい。

「朝飯はさっきの残りが冷蔵庫あるから、チンしてやって。
あと、タマキから目を離すと一瞬で部屋が大変なことになるから気をつけてね」

 リセさんは、にこりと目を細めて台所に向かって歩みを進めた。

「暗いんで、帰り道気をつけてくださいね」

 ありがとう、という声を聞いてから、私も歩き出すと「唯ちゃん」と呼び止められた。

 リセさんは、何か言いたげに複雑な顔を私に向けた。でも、それはほんの一瞬で消えて。

「……髪、ちゃんと乾かしてから寝るんだよ」

 ふわり、と優しく微笑んだ。
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