わがままモデル王子は危険な香り

達明の元妻と二人きり

達明の足音がどんどん小さくなっていった

達明の奥さんが四つんばになって倒れていた

私はベッドから降りると、奥さんの顔を覗き込んだ

「あの…大丈夫ですか?」

ゆっくりと奥さんが顔をあげる
目の上に大きな痣ができている

さっき殴られたものじゃない
もっと前に殴られてできたものだ

細い腕にも
無数の傷があった

「ごめんなさい
あの時、あなたを刺すつもりはなかったのよ」

奥さんが小さな声で口を開いた

「え?」

「あのとき貴方の隣には達明がいたでしょ?
私は達明を刺したかったの
だけど…達明は貴方の陰に隠れて……」

私を刺すつもりじゃなかった?
どういうこと?

「あ、あの……とりあえずベッドに座りませんか?」

私は奥さんを支えて立ち上がると、ベッドに並んで座った

奥さんの体は異常にやせ細っていて、頬もこけていた
以前に会ったときよりもずいぶんと小さくなっている

「あの……」

「私の名前は桜稀(さき)よ」

「桜稀さん
私を刺すつもりはなかったって……本当ですか?」

桜稀さんはコクンと頷いた


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