闇夜の数だけエゴはある
流血だけではない。

かすめただけにもかかわらず、儚の体が後方へと吹き飛ばされる。

自らバックステップしたというのを差し引いても、その飛距離は異常だった。

武羅人の攻撃は見た目以上の威力があるという事か。

堕蓮持ちという特異な存在の戦闘能力は、私達通常の亜吸血種には計り知れないものらしい。

優に7メートルか8メートルは吹き飛ばされた儚。

ドサリと音を立てて、地面に叩きつけられる。

相当強かに打ちつけられたようだった。

「……!」

その衝撃ですぐには呼吸が出来ない。

苦痛に顔を歪め、数秒後に初めて咳き込むように息を吐き出す。

武羅人はそれをしばしの間見ていた。

まるで何かを確認するかのように。

それが儚がまだ生存しているかどうかの確認だというのは、後になってからだった。

そして生存を確認するや。

「っ!!!!」

武羅人は一気に儚との間合いを詰めた!

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