闇夜の数だけエゴはある
お茶を半分ほど飲み、茶菓子も一口二口と食べた頃。

「ねぇ儚」

ずずず、と。

作法も何もあったものではない、湯呑みを片手で掴んで呷るという飲み方で茶を啜って、しとねが言葉を発した。

「あんたはここに何しに来た?」

「……」

湯呑みを置いて、私は真っ直ぐにしとねを見る。

「美味しいお茶が頂けると聞きましたので」

「はぐらかすのは止しなよ」

薄く笑うしとね。

その笑みに戦慄した。

『次に本心を告げなかったら殺す』

彼女は笑顔でそう突きつけていた。

「あんたは、ここに、何しに来た?」

一言一句、丁寧に繰り返す。

「……」

私は小さく深呼吸して、答える。

「会談です…場合によっては、闘争も辞さない覚悟で」

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