闇夜の数だけエゴはある
その傷痕。

私はすぐに武羅人の闘争相手に気づいた。

あの傷痕は野須平の能力、『旋』によるもの。

名前こそ大層だが、種を明かせば単純だ。

私の『飛翔』と原理は同じ。

私は脚で、野須平は手でそれをやる。

ボクシングでいうフリッカージャブと一緒だ。

腕全体をしならせる事でスナップを効かせ、オーソドックスからのジャブとは異なる軌道で相手の顔面を捉える変則ブロー。

野須平のそれは更に凶悪で、拳を打った瞬間に肘から先、或いは肩から先が消失する。

そして予想だにしない距離、予想外の角度から放たれたそれは、かすめるだけで亜吸血種の肉体さえも削ぎ落とし、抉り取る凶器と化す。

ある意味では私の『無影の蹴撃』以上に厄介なシロモノだった。




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