-月の果てreplay story-

〜トラキアside〜忘却した心



──…あの男は、とにかく優しかった。


だから、怖かったんだ。


優しさなんて

知らなかった頃の俺は──…



「………どうするって、何を」

とトラキアは、眉をしかめた。


「王子に決まってんだろ、馬鹿」

デカルトは、呆れたように言った。



───…相変わらず、


ははっと苦笑いを浮かべるトラキア。



人を差別して会話しやがる..



「王族専用の牢獄だから、まだましなものの……牢屋行きだなんて。王は、どうかしている..」

とデカルトは、深い溜め息をついて

額を抑えた。
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