和念。
入学と出会い。
今日は入学式。

中高一貫システムを導入している佐良中と伊良中と、伊良高。

この小さい島の小さい高校に、僕は入学した。


僕は佐良中出身でも、伊良中出身でもない。

前の学校で虐められて、父の故郷の、この島に渡った。

父はIT会社の重役。
だからと言って、僕の家は特別裕福でもなく、まぁ、一般家庭よりも多少余裕があるだけ。

でも、この島に渡ったからには、父は会社を辞める訳に行かず、母も小さいながら起業しているため、僕は父の親友の家に預けられた。


洋平おじさん。
小さい頃よく遊んでくれたから、知ってる。
優しいおじさんだ。

それに、洋平おじさんには僕と同い年の男の子がいる。

2、3回合っただけだから、覚えているか不安だったりして‥‥


今僕は「酒井」と言う表札とにらめっこ。




「あれ?麻くん?」


急に名前を呼ばれてびっくりしたけど、僕の名前を知ってるって事は、洋平おじさんの奥さんかな‥?


「‥は、はじめまして。」

「もう、酷いんじゃない?おばさんのこと忘れちゃったかなぁ~?」

そう言って僕の頬をぐりぐりして来た。


思い出した‥。
可奈子おばさん‥。

根は優しいんだろうけど、このホッペグリグリを最初にやられた時のトラウマで、ほとんど可奈子おばさんとは口を聞かなかった。


「‥おもひだひた。」


今度は頬を引っ張って遊び出したおばさんに、なんとか思い出した事を伝えた。


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