マジックストーン

「石谷先生っておしゃべりだったんですね」

 両手にお弁当を下げて、人が変わったように冷静に言葉を発する梨海ちゃん。

 石谷先生が大げさに肩を竦めるのを見てから、私ににこりと微笑んだ。

「体調悪いなら言ってくれれば良かったのに」

「ごめんね、梨海ちゃん。私も気付かなかったの」

「倒れるまで?」

「うん」

 さすが優衣ね、とくすりと笑った梨海ちゃんは、二つのお弁当を持ち上げた。

「あたしお腹空いたわ。気分転換も兼ねて、外で食べない?」

 木陰とかが良いわね、なんてひとりごちる梨海ちゃんは早々と石谷先生に背中を向けて、ドアを開ける。

 私もその背中を追おうと、ペコリと石谷先生に頭を下げた。

「ありがとうございました」

 石谷先生の前を通りすがった時「なあ、椎葉」と、肩を掴まれた。

「神崎のこと好きになること、俺はオススメしない」

「………?」

「お前に神崎は重すぎる」

 何が言いたいんだろ、石谷先生。

 それもすごく真剣な顔して。

「石谷先生。優衣には分かりませんよ。 それに、もう手遅れなんで」

 先に行ったはずの梨海ちゃんが戻ってきて石谷先生にそう言い、「ほら行くよ」と私の手を引っ張った。



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