マジックストーン

ほっこりするあたたかさ



 ◇◇◇


 優衣ちゃんのノクターンを聞いた日から何日経ったんだろう。

 俺一人には大きいキングサイズのベッドに仰向けで寝ている俺は、天井を睨み付ける。

 優衣ちゃんの奏でる音色とあいつの音色は全然違ったんだ。

 初めて聞いたかもしれない。あんな優しくて柔らかい音色。まだちゃんと耳に残ってる。

 出来るなら優衣ちゃんの音色で一日でも早く塗り潰して跡形もなく消してほしい。

 あいつの音はどうしても気持ちが悪くなるんだ。

 両足を上げて勢い良く下ろす。その反動で起き上がった俺は、ベッドから降りた。

 部屋の冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出して部屋を出た俺は、階段を降りてリビングのソファーに座る。

「お目覚めですか」

 低く威厳があるのに優しい声。その声に振り向けば、しっかりとスーツを着こんだすらっとした白髪の男が微笑んでいる。

「黒爺(くろじい)おはよー」

 黒川栄次郎(くろかわえいじろう)簡単に言ってしまえば神崎家の使用人。深く入り込めば、俺の世話係り兼父親変わりとして、俺が生まる前からここで働いている。

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