マジックストーン
ずいっと、顔を近付けた石谷先生は、にこっと柔らかくほほえ――
「出来るかって聞いてんの」
――ちちちちちちちち近ーいっ!!!!
「でっ! 出来るわけないじゃないですかあっ!!!!」
がたんっと立ち上がった私は、ここから逃げ出そうとして、何故か再びソファーに沈んだ。
「っえ?!」
不思議に思って下を見れば、石谷先生に腕を引っ張られたみたい。
「そんなことは分かってんだよ。 神崎と、なら。キス出来るんじゃねーの?」
「かっ?!」
神崎先輩とっ?!
「ああ……ちょっと、飛ばしすぎたな。 例えば、この三ヵ条を満たせば“好き”だってことが分かる、くらい簡単なのがいいよな」
ごくりとコーヒーを飲み干した石谷先生は立ち上がり、再びコーヒーをいれる。
保健室がコーヒーの香りに包まれたとき、コーヒーを一口飲んだ口が開いた。
「一つ目。目が合っただけでドキドキする。 二つ目。その人とたくさん話して自分を知ってほしくなる。 最後は――」
にっと笑った石谷先生。
「最後は?」
「――その人を知りたいと思う」
知りたいと思う……? それは、神崎先輩をってことだよね。神崎先輩を知りたいって思うこと……か。