マジックストーン

 わ、忘れてたわけじゃなくて、その、ね?ちゃんと覚えてたから、私も言ったわけで。

「ちゅうしてくれないんだったら、俺、帰っちゃうよ? いいのかなあー。俺、帰って」

 うう……。

「俺はこんなにも優衣が大好きなのに。常日頃からこんなにも愛情表現してきたのに。……優衣は全然してくれないんだね」

 あ、愛情表現って言われたって!そそそんなっ。神崎先輩がいつも私にしてくることなんて絶対出来ないもん……。

「帰っちゃおうかなあ。あ、でも、帰っちゃいやって言われたしなあ。どうしようかなあ。ね、優衣はどうすれば良いと思う?」

 だから。普段出来ないから、神崎先輩にくっついて一生懸命言ったのに……。

 からかってるんだって分かってる。けど、今日怖いこといっぱいあって、反論する余裕ないから……私っ。

「わっ!!!? ゆ、優衣?!」

「っ……ひっ。ばかあー……ずずっ」

「わわわっ! 俺が悪かった!だから――」

「ただっ……一緒にいたかっただけなのに……ひっく……どうして?どうして神崎先輩はっ……」

 いつもそうなの?をかき消すようにきつく、きつく抱きしめられた。

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