黒髪マドンナ
もともと体が丈夫なわけじゃない。
熱く大きく腫れた扁桃腺の痛みは通院でなんとかなるようなものじゃなかった。
ご飯は勿論、自分の唾液すら飲み込めない苦しさ。
じんじんと止まない喉の痛みにあたしは密かに泣いた。
他人同士が8人集まる病室のカーテンに遮られた一角で。
病室は暑く、それに重ねて自分の体温が上がる気さえする。
美味しくない病院食。
何度も腕に刺される注射針。
これらの条件はあたしを完全に滅入らせた。
そんな辛い状況の中での唯一の救いは大学で仲良くしている友達、先輩がお見舞いに来てくれたこと。
あたしにはこんなに人との繋がりがあったんだと確認させてくれる嬉しい時間。
各々がお菓子や飲み物その他、大量の差し入れをくれた。
本当に嬉しくて、申し訳なくてあたしはどうしていいか分からないほどだった。
今振り返ればたった一週間の入院だったけどすごく辛くて考えさせられることがたくさんあった時間だったと思う。
そして他に入院で得たもの…彼氏。
友達から彼氏への変化についていけなかったあたしは悩んだ。
悠馬と付き合うのがこんなにも悩ましいものだったなんて。
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