君色


「市川」


ドキッ。


あたしを呼んだその声が誰のものか、姿を見なくてもわかった。

日向とそんな話をしていたからなのか、名前を呼ばれただけであたしの胸は高鳴る。



日向が変な事言うから意識しちゃってるじゃん!



あたしは精一杯のポーカーフェイスを装って後ろを振り向いた。



「北斗。おはよ」

「おぅ。昨日…俺んちに見舞いに来てくれたんだって?」



自覚なしかい!?

そりゃそうか…
あたしの事まどかと勘違いしてたくらいだもんね。



「元気になってよかった」

「ありがとな」



北斗は一言お礼を言うと、この前の事には触れずにそのまま自分の席についてしまった。



え!それだけ!?

他にもっと言う事あるでしょーよ!?





“恋人ごっこは終りだ―…”




いきなりあんな事言われても訳わかんないし!


それとも何?
あたしの意思は関係ないって?



なんか…凄いムカツクんですけど!!
< 48 / 270 >

この作品をシェア

pagetop