暗黒の時代(とき)
暗黒の始まり
中学時代、私はバレーボール部だった。それは珍しいことではないだろう。
だが、私はバレーボールをはじめとしてスポーツ全般を苦手としていた。
「スポーツが苦手なのに、何故バレー部?」そう思ってくれるだろうか。
理由は単純で、私の通った中学には女子バレー部と男子野球部しか部活がなかったからだ。
そして、嫌々ながらもバレー部だったのは、校則に『全員部活に加入すること』とあったからだ。

そう、私は部活が嫌いだった。「部活が嫌い」という言葉は一種の禁句(タブー)だった。よって、私は中学時代ほとんど誰にも部活の不満を言えずに、ただ我慢し続けなければならなかった。

大学生になって中学時代の部活の話をする時、私に選択権はなく、強制的にバレー部に入れられた話をすると、ある人は驚き、ある人は「それはひどい」と言い、ある人はあまりのことに大笑いした。私にとっては大笑いさえ嬉しかった。あの信じられないような日々を「信じられない」と思いながら耐えた、私の思いは間違っていなかったと思えたから。
私が育った街は、近隣の街にも小さな学校が多く、私のように意に沿わない部活に加入せざるを得ない生徒は珍しくなかった。それに私が進んだ高校には同じ中学の先輩もたくさんいた。だから中学卒業後、高校生になってもあまり大きな声で部活が嫌だったことは言えなかったし、みんな似たような境遇だったから言ったところでさして同情もしてもらえなかった。

ともかく、私は中学1年生の4月に、入部届すら出すことなく、バレー部員となったのである。
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