【奏】春に降る雪
春に降る雪
木々から溢れる眩い光に誘われて
見上げれば一面に桜色の空。




散りゆく花びらが
頬をそっと優しく撫でた。









『今年はまだ結構咲いてるよな!』




隣で言った高野春樹・通称ハルに視線を移す。


眩しそうに、だけど嬉しそうに桜の木を見上げるその横顔に今日も私の胸はドキンと音を立てる。





『去年は前の日の強風のせいで、散った後の桜の枝だけしか見れなかったもんなぁ』




「でも前の日にハルと私だけはちゃんと咲いてる桜を見れたでしょ?」




正しくは舞い降る桜の花びらを…なんだけどね?





『ば〜か!花見の席で見なきゃ風情が無いだろ?

前の日の場所取りで見たのなんてカウントに入らねーのっ

茜は花見をわかっちゃいねーな!』





小バカにされたように言われてちょっとムッとする。




わかっていないのはハルの方だよ。






去年の花見の場所取りで、ハルの事好きになって、

一緒に見た桜吹雪は、かけがえのない大切な思い出になったんだよ。




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